雨後のベニテン

    台風後の富士山。森の中で赤い傘がひときわ目立っていた。一瞬、タマゴタケかと思ってしまうが、柄とツバの色が白であることを確認すれば、これはベニテングタケであることがわかる。傘の上の白いイボは、雨で簡単に流れてしまうのだ。キノコ初心者で「タマゴタケだけはわかる」と言う人がよくいるが、要注意だ。


    2015/9/12 (富士山)


    2015/9/12 (富士山)

    ベニテングタケで本当に幻覚は見られるのか?

    7月の末頃からすでに富士山の原生林の中ではベニテングタケが姿を現してはいたが、盛期に入ったであろう8月になっても、いつもより発生の数が少ないように感じる。例年ならば、今頃、カンバ科の樹木の周辺に、その美しい姿をいくつも確認できるのであるが。
    おとぎ話に出てくる「白い水玉模様のある赤いキノコ」のモデルは、このベニテングタケだ。ファンタジーの中に登場するのは、単に見た目の美しさだけではなく、その「効果」によるところも大きいと思う。ベニテングタケの毒性はいわゆる「幻覚系」のものであり、ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」などは、ベニテングタケを食した際の視覚の変化についての記述をヒントにしたと言われている。その神秘的な効果が、ファンタジーの世界とつながっているわけだ。
    では、ベニテングタケを食べると実際に幻覚が見られるのだろうか?私の経験から言うと、答はノーだ。ただし、ものすごい量を一度に摂取するとどうなるかはわからない。私は、ベニテングタケを毒抜きなしで何度か食したことがある。その幻覚性に興味はなかったが、白土三平などの「経験者」が「このキノコを食べると、美味すぎて、他のキノコが食えなくなる」などと言っているものだから、それは食わないわけにはいかんだろうと試してみたのだ。
    初めは、ソテーしたベニテングタケ1本を菌友3人と分けて食べてみた。確かに、醤油を少し垂らしただけでも充分な旨みがある。肉厚で歯ごたえも悪くはない。この時、ベニテングタケを食べた後の私は、菌友たちから「やたらとおしゃべりになっている」と指摘された。それがこのキノコの効果なのか、その時に飲んでいた酒の影響なのかは定かではない。その次に、やはりおなじような量を食べた時には、いつもはのんびりしている一人の菌友の行動が、やたらとテキパキしだしたことがあった。シベリアの猟師たちが、このキノコを「疲れ取り」のために食すと聞いたことがあるが、どうやら、ベニテングタケを食べると「強壮剤」的な効果がもたらされるらしい。その後、「ベニテングタケ鍋」を大人数で囲み、一人平均4~5本まで食べたこともあるが、吐き気に襲われる者は現れても、幻覚などを見た者はいなかった。恐らく、幻覚を見るに至るには10本以上は食べなければならないだろうし、それだけの数を食べれば、幻覚が訪れる前に吐き気に襲われてトイレに駆け込むはずだ。
    私は、20年ほど前にバリ島でマジックマッシュルームを食べたこともあるが、今では日本で非合法化されているシロシビン、シロシン系のキノコとこのベニテングタケはまったく異なるものであることをお伝えしておく。悪いことは言わないので、ベニテングタケはその美しさを愛でるだけに留めるか、「美味いキノコ」として食べるとしても1日1本程度までにしておいたほうがいい。

    ※ベニテングタケを長期間に渡り食べ続けると毒素が蓄積して肝臓に障害が出ると言われるので、くれぐれもご注意いただきたい。


    2010/8/27 (富士山)


    2010/8/25 (富士山)

    自然に生えているキノコを採って食べる

     自然に発生しているキノコを採って食べていると、いろいろなことを考えさせられるものだ。自然のこと、食のこと、毒のこと、自己責任のこと、人間のこと。
     例えば、ここにアップした写真のベニテングタケ。おそらく世界で最も有名な「毒キノコ」だが、こいつも私の胃袋に納められた。別に「トリップ系」ということではなく、「美味なるキノコ」として食べたに過ぎない。もちろん量が過ぎると「酔って」しまうのだが、そこは自分で規制すればいいだけのことだ。アルコールの摂取と何ら変わらない。飲み過ぎて身を持ち崩す輩もいれば、人生において幸せに付き合っていける人もいる。
     いわゆる「マジックマッシュルーム」と異なり、ベニテングタケには法の規制はかかっていない。アルコールには法的に年齢制限があることを考えると、すべてを自己責任にゆだねられているわけだ。自己責任において「自然」と付き合っていけば、そこには否応なしに「畏怖」という感覚が生まれてくる。すなわち、自然に対する敬意と恐怖である。それは、日本人が古の時代から持ち続けてきたアニミズム的モラルだろう。そこに立ち返れば、世の中のいろいろなことが「見えてくる」などと言ったら大げさだろうか?


    2009/8/26(富士山)
    Eat-a Fungi.
    東京在住。キノコ中級者。いちばん好きなキノコはチャナメツムタケ。自由業。

    Eat-a Fungi

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    *このブログ中でのキノコの同定には間違いがある可能性もあります。天然キノコを食される場合にはご自身の責任においてご判断ください。 *福島第一原子力発電所事故の影響により富士山をはじめとする各地で天然キノコの採取に対する自粛の要請が自治体から出されています。このサイトは皆さまに各地での天然キノコ採取を薦める主旨のものではありません。くれぐれも、各自、自己責任でのご判断を願います。