エノキの生える木、生えない木

    広葉樹の山の渓谷沿いを歩いてエノキタケを探してきた。以前はエノキタケの発生が見られた倒木や立ち枯れ木でも、数年でまったく生えなくなる。そのリミットは3〜4年だろうか。エノキタケは朽ち木の中でも、まだ樹皮が残っているような比較的若いものに出てくることが多いと思う。


    2016/11/10 (山梨県)


    2016/11/10 (山梨県)

    今年は冬の訪れが早いのか

    先日、富士山のブナ林の中で冬キノコのエノキタケを見たと書いたが、広葉樹林が広がる山間を貫く渓流沿いでも、倒木や切り株にもうエノキタケが発生していた。例年だと10月末あたりから姿を現すイメージなのだが、やはり今年は、冬の訪れが早いのだろうか。マイタケ山で出会ったキノコ師の人が「今年は、マイタケも、もう終わりだなあ」と言っていたのは、あながち見当外れではないのかも知れない。


    2015/10/3 (山梨県)


    2015/10/3 (山梨県)

    こっちは冬の始まりを告げるキノコ

    前の記事で書いた「シーズン(秋)の終わりを告げるキノコ」に対して、印象で言えば、こっちは「冬の始まりを告げるキノコ」ということになるだろう。エノキタケ。冬の間、雪の下でも元気に発生している冬キノコだ。別名はそのまんまで、ユキノシタ。冬キノコには、ヌメリで寒さや乾燥から身を守っている種類が多いが、最近の晴天続きのためか、さすがのエノキタケも乾き気味だった。
    下段の写真の個体のように、たっぷりと日光が当たる場所に生えたエノキタケの柄は、黒に近いような焦げ茶色をしている。歯ごたえもガジガジと硬めなので、個人的にはカサだけを食すようしているのだが、栽培もののエノキタケは「柄」を中心に食べるよう改良?されているわけだから、天然もののエノキタケは味わいがまったく異なるのも当たり前だろう。どっちが美味いか?それは、言わずもがなです。


    2011/11/1 (山梨県)


    2011/11/1 (山梨県)

    冬キノコのはじまり

    季節的にはちょっと早いかなとは思いつつ、まだ見たことのない天然ナメコを探しに、とある渓谷沿いを歩いてみたのだが、川岸の倒木に生えていたのはエノキタケだった。地方によってはエノキタケのことをナメコと呼ぶところもあるくらいで、どちらも、日本人には古くから馴染みのあるヌメリ系の食菌だ。エノキタケは、今から冬を越して来春4月あたりまで広葉樹の切株や倒木などに発生する冬キノコである。雪が積もっても生き続ける菌で、ユキノシタという地方名もある。小型のものが多く、ヌメリもあるので処理が面倒ではあるが、天然のエノキタケは非常に美味しく、我が家でも人気のある天然キノコの一つだ。
    時には10cm近くまでカサを広げているような巨大なエノキタケがあるが、その大きさだけに限らず、姿形や色合いがこれほどまでに栽培種と異なるキノコも珍しい。栽培種はエノキタケの「もやし」みたいなもので、日を当てないと、カサを広げずにどんどん背だけが伸びていくらしい。栽培種はあの柄の歯ごたえが美味しいが、天然のエノキタケの主役はカサである。天然種のカサには旨みが凝縮されており、喉をツルンッと滑ってゆく強すぎないヌメリが絶妙だ。個人的なお薦め料理は、茶碗蒸しと雑炊。エノキタケは都内の公園などでも発生するようなので、これからの冬の季節、散歩がてら探してみてはいかがだろうか。


    2010/11/3 (山梨県)


    2010/11/3 (山梨県) ※渓谷沿いの立ち枯れ木に生えていた径5~6cmほどの個体。


    2010/10/14 (山梨県) ※日がよく当たる場所に生えているエノキタケは焦げ茶色になる。

    栽培キノコと天然キノコ

     スーパーなどで市販されているキノコのほとんどは人工栽培されたキノコだ。そしてそのほとんどが木材腐朽菌といって、枯れた(もしくは弱った)木から養分を摂取して発生する種類のもの。例えばマツタケは菌根菌といって、言わば生きている樹と共生するタイプで、今のところ人工栽培は実現していない。
     日本においてもっともポピュラーな栽培キノコであるシイタケは、天然ものと栽培もの(特にホダ木栽培もの)では大きな差がない。一方で、天然ものと栽培もので、その姿や風味に最も大きな隔たりがあると言われるのがエノキタケだ。天然ものは、ご覧の写真のように普通のキノコ然としている。柄も黒褐色で、さほど長くはならない。大きいものでは、傘の径が10cmほどになるものもある。白くてひょろ長く、傘も小さな栽培ものは、言うなればキノコのモヤシみたいなものだ。どちらが旨いかと聞かれれば私はもちろん天然ものだと答えるが、栽培ものは栽培もので美味しいと思う。まあ、この2つはまったく別のキノコだと思った方がよかろう。
     最近では、長年研究されてきた「ホンシメジ」の栽培ものが市場に出まわっている。残念ながら、私は天然のホンシメジにまだ出会ったことがなく、味の比較ができていない。しかし栽培もののホンシメジは、なかなか上品な味わいの旨いキノコであった。これで、日本の三大美味キノコのうち、ホンシメジマイタケは栽培が可能になったわけだ。あとはマツタケか。クローン羊なども作れる世の中でまだマツタケの人工栽培が実現していないということは、毎年マツタケと出会っているキノコ師にとっては愉快なことでもあるが。


    2010/4/9 (河口湖町)
    Eat-a Fungi.
    東京在住。キノコ中級者。いちばん好きなキノコはチャナメツムタケ。自由業。

    Eat-a Fungi

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    *このブログ中でのキノコの同定には間違いがある可能性もあります。天然キノコを食される場合にはご自身の責任においてご判断ください。 *福島第一原子力発電所事故の影響により富士山をはじめとする各地で天然キノコの採取に対する自粛の要請が自治体から出されています。このサイトは皆さまに各地での天然キノコ採取を薦める主旨のものではありません。くれぐれも、各自、自己責任でのご判断を願います。