狐の茶袋

     デザートキノコについて書いた時に触れたホコリタケが、これ。この個体はまだ若々しいが、古くなると褐色気味になり、最後にはてっぺんに穴が開いてそこから胞子をホコリのように撒く。森の中に入らずとも、土があればどこにでも発生するのではないか。子供の頃、家の庭なんかに出てたホコリタケを踏みつぶして遊んだ記憶がある。
     割ってみて中身が真っ白な状態のものは食べられる。まわりのパリパリとした皮を剥いて鍋に入れたり、ソテーしたり。まるでハンペンのような食感で、意外と美味いと思う。ほぼ無味無臭だが、奥の方にちゃんと「キノコの味」がする。みたらし団子風というデザート料理にしてみると、その「キノコの味」と「デザート」の世界観が自分の中では相反してしまってNGだった。
     ホコリタケには、土から発生するものと朽ち木から発生するものがある。前者をキツネノチャブクロ、後者をタヌキノチャブクロともいう。キノコは古くから山や森の生活に密着してきたものだからか、こういう民話的な呼び名が多い。ホコリタケなんて素っ気ない名前よりも、よっぽど心が和むものだ。


    2010/5/30 (東京郊外)

    クサい菌

     キノコの中には、とてもクサい一群がある。胞子を運ばせるためにグレバというクサい液を出して、ハエなどの虫を誘う。その液が、まあハエが好みそうな臭いというわけだ。スッポンタケキヌガサタケなどが有名だが、ここに写真を挙げたサンコタケもクサい仲間。
     三本の指のようなものが上で結合して、仏教で使う「三鈷」という道具に形が似ているのでこの名がついたそうだ(サンコタケには指4本タイプや指6本タイプもあるらしい)。その指の間にみえる泥のようなモノがグレバという液体。雨の後だったからか、この個体ではそれほど強烈ではなかったが、通常は「ドブ川のような悪臭」を放つという。下に見える白い卵のようなものは幼菌。この卵を破って中から姿を現す。
     このクサい連中は面白い形をしたものが多く、他にもイカのような形のイカタケとか、カゴ状のカゴタケなどがあり、虫だけでなくキノコ好きの人間をも強く引きつける。


    2010/5/30 (東京郊外)

    キサケツバタケとサケツバタケ

     以前取り上げたサケツバタケには、傘が黄色いキサケツバタケという変種?がある。写真をアップしたものは、おなじような傘の色をしたツバナシフミヅキタケと思われるキノコの群生の中に紛れて生えていた。ちょうど、1kmほど離れたところにある別の場所でレギュラーのサケツバタケが生えていたので採取して、成菌と幼菌の細部を比べてみたのが下の写真だ。
     キサケツバタケは、サケツバタケに比べると明らかに黄色い。ただし、ヒダの灰紫色や星形のツバ、柄の繊維模様などの特徴は両者とも同じ。キサケツバタケの方が全体的に背が低い感じもあるが、これは生えている環境によっても異なるのであろう。まだ試食していないのだが、おなじ風味・味わいということだ。この両者、海外では単なる「色の変異」として同一種類と認識されているらしい。
     森の中を歩いていると、ムキタケの紫色の個体など「これが同じ種類のキノコか?」と思うような変異が時々見られる。そんな時は自然の奥深さを感じるのだが、人間にもいろいろな色があるのとおなじようなことなのだろうか?


    2010/5/26 (東京郊外)


    それぞれ左がキサケツバタケ、右がサケツバタケ

    デザートキノコ

     天然キノコの料理(レシピ)として「デザート」というのが普通にある。有名なのはオオゴムタケの中身を湯がき、黒蜜やシロップをかけてゼリーのようにして食べるというやつか。私が実践したことがあるのは、ホコリタケのみたらし団子風というデザート。皮を剥いたホコリタケの中身を湯がき、みたらしのタレを付けて食べるのだが、味は「う~ん・・・」という感じだった。やっぱ、ソテーしてハンペンのように食う方が美味いかな。
     一般の人たちが最も多く体験しているデザートキノコは、ここに写真をアップしたシロキクラゲではないだろうか。よく中華料理の最後に出てくる薄甘いシロップのようなデザートに入っているあれだ。キクラゲ系は、基本的に無味無臭に近く、そのゼリー状/クラゲ状の食感を味わう食材なので、まあ味付けでどうにでもなるわけだ。このシロキクラゲは、中国では不老長寿や美肌のための高級食材とされており、楊貴妃も食べたとされている。これから梅雨の時期、キクラゲ類はあっちこっちに発生しはじめるので、皆さんも試してみてはいかがだろうか。


    2010/5/26 (東京郊外)

    お薦めキノコ本

     「キノコは実際に経験して覚えていくもんだ」と言う。確かにその通りだろう。しかし、いきなり山に飛び込んでもキノコが覚えられるわけではない。そこで「本」で勉強していくわけだが。ここで、私が重宝しているキノコ本について、少しご紹介しよう。

     キノコは、同じ種類であっても生育環境によってその見映えなどの特徴が変化する。だから、最初はホームグラウンドを決めて、まずはその場所のキノコを覚えていくとよい。そして、その基準とするに相応しい場所が富士山だと思う。なぜなら、普通は場所によって採れるキノコの種類に偏りがあるものだが、以前にも触れたように富士山には非常に多くの種類のキノコが発生するからだ。その富士山のキノコを覚えるのに重宝するのが、写真左上の「富士山のきのこたち」という本。この本は御殿場食品衛生協会から出版されていて、通常の書店ルートには乗らない「地元本」である。掲載されている菌種は毒キノコを含めて180種ほど。ハンディタイプで、一つ一つの情報量は少ないが、富士山のキノコを覚えるにはまずここから始めるといいと思う。まだ御殿場食品衛生協会のサイトから買えるはず。この本の編集責任者と料理のレシピを担当されている米山御夫妻は、須走五合目の東富士山荘でキノコの鑑定もしてくれる。おなじ富士山でも静岡側と山梨側ではキノコの名前や評価に若干の違いがあるので、その辺はご注意を。「富士山のきのこたち」HP: www.g-news.jp/kinoko/

     「キノコを覚えることはキノコの変異の幅を覚えること」と言われる。確かに、同じキノコでも生育した環境や成長の度合い、天候状況などによって、さまざまにその姿を変える。その幅を知ることではじめてそのキノコを「覚えた」ということになる、というわけだ。右上の写真の「きのこの見分け方」という本は、メジャーな食菌66種類(プラス毒キノコ7種)に絞り込み、一つ一つについてたくさんの写真を載せているのが特徴だ。幼菌から老菌までの変異、そして色などの振れ幅を写真で確認できるのはとてもありがたい。初心者にはマストの本かも知れない。中古市場では見かけるが、もう絶版なのだろうか。講談社刊。



     食菌だけでなく、さらに広がるキノコの世界を知ろうと思うならば、この本がバイブルということになるのだろう。あまりにも有名な「山渓カラー名鑑/日本のきのこ」である。掲載キノコ945種、写真もキレイな豪華本だ。ただし、この本に載っていないキノコにも普通に出会ってしまうのがキノコの世界の奥深さでもある。分厚い本なので、辞典として本棚に置いておくのがよさそう。山と渓谷社刊。

     私は、面白そうなキノコ本を見つけるとつい買ってしまうのだが、そんな中で他とはちょっと趣向の違った本を一冊ご紹介。「見る・採る・食べる きのこカラー図鑑」講談社刊。古本屋で見つけて買ったのだが、昭和62年刊ということは、もう20年ほど前の本になる。掲載キノコ350種。主だった食菌・毒菌はもちろん、他の漢方系や小型キノコなども豊富に掲載。いろいろなキノコにまつわる逸話や歴史なども載っており、読み物としても面白い。それぞれのキノコの名前の「漢字表記」が載っているのも変わっている。特にこの本が際立っているのは、菌糸や菌根、菌核といったキノコの「地下部分」についての記述や説明が詳しいということだ。さらに巻末には、具体的な地図入りで北海道、東北、栃木、長野の「きのこ狩りガイドマップ」が載っている。「エリア」レベルでの紹介だが、キノコが採れる場所は他人には教えないと言われるキノコ界では、これは珍しいことかも知れない。

     キノコの研究はまだまだこれからの世界でもあり、詳細が不明な点も多い。古い本と新しい情報では内容に違いがあったりもするので、古い情報を見る時にはその辺も気をつけた方がいい。読んで、採って、また読んで確認。これを繰り返し、とにかく自分の中で経験値を上げていくことだと思う。ただし、くれぐれも毒キノコにはご注意を。

    キノコを嫌いにするキノコ

     「キノコが苦手」という人の「理由」を探ると、「子供の時にシイタケの匂いでやられた」という人がけっこう多い。
     日本で一番メジャーなキノコがシイタケであることに疑問を挟む余地はないだろう。最近でこそ「生シイタケ」が普通に売られているが、私たちが子供の頃は「乾燥もの」しか見たことがなかった。シイタケは乾燥させるとその旨みが強くなる。それを水で戻す時に、あの強烈な匂いが広がる。確かに私も、子供の頃はあの匂いが苦手だった。
     しかし、採ったばかりの新鮮な天然シイタケは匂いがとても穏和。肉厚で味も良く、非常に美味しいものだ。(昔は生のままでの流通が難しかったという事情もあるだろうが)旨みを引き出すためという目的で乾燥させたのに、一方でそれがシイタケ嫌いを増やしていたという皮肉。どうもシイタケが苦手で・・・というままずっと敬遠してきた人には、ぜひ、採れたてのシイタケを食べてもらいたい。


    2010/3/13 (神奈川郊外)

    ひどい仕打ちの毒キノコ

     死に至る猛毒菌をはじめ、毒キノコの症状にもいろいろあるが、話を聞くだけでもこのキノコほど人を嫌な気分にさせるものはないのではないか。ドクササコ。ヤケドキンとも呼ばれる。このキノコは、食べても死に至ることはないらしい。しかし、その症状は手足や鼻、そして男性のイチモツなどの先端に「火箸を刺されたような痛みが1ヵ月ほど続く」という。いやはや、なんとも。
     まだキノコの知識があまりない頃に、このキノコには富士山で出会っている。けっこう立派なキノコがまとまって生えていたので、鑑定してくれるおばちゃんのとこに持って行ってみると、即座に「ドクササコ」と。このキノコについては、図鑑などによく「じょうご型」と書かれてたので、まったく思いも寄らなかった。私の前に現れたものは、じょうご型を上から無理矢理つぶしたような、ゆがんだ形をしていた。それ以来、このキノコには出会っていない。
     面白菌とも異なるが、「死の天使」と呼ばれるドクツルタケなど猛毒菌にはその佇まいが立派なキノコが多く、やはり出会ってみたい種類が多い。今シーズン狙っているのは、シャグマアミガサタケだ。まるで脳みそをグチャグチャにしたような姿からして毒々しいキノコだが、北欧などでは毒抜きをして普通に食べられているという。しかし、毒抜きのために茹でこぼす際の湯気を吸っただけで「当たる」くらいの猛毒らしい。富士山では、もう発生しているはずだ。もちろん、出会えたとしても、食べる勇気は私にはまだないが。


    2007/9/5 (富士山)
    Eat-a Fungi.
    東京在住。キノコ中級者。いちばん好きなキノコはチャナメツムタケ。自由業。

    Eat-a Fungi

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    *このブログ中でのキノコの同定には間違いがある可能性もあります。天然キノコを食される場合にはご自身の責任においてご判断ください。 *福島第一原子力発電所事故の影響により富士山をはじめとする各地で天然キノコの採取に対する自粛の要請が自治体から出されています。このサイトは皆さまに各地での天然キノコ採取を薦める主旨のものではありません。くれぐれも、各自、自己責任でのご判断を願います。