ペットまで健康にしてしまうキノコ

    キノコについて調べようとして菌種の名前を入れて検索すると、通常はたくさんのキノコ師の皆さんや菌類の研究機関のブログ、ホームページなどが挙がってくる。しかし、このキノコの名前を入れてみると、いろいろな企業の広告ページがズラッと並ぶのが、ちょっと異様だ。ハナビラタケ。免疫力を上げるとか抗ガン効果があるとかで、ここ数年、いろいろな企業が栽培・商品化している。最近ではペット用のハナビラタケまで販売されており、苦笑するしかない。
    このキノコに初めて出会ったのは、4年ほど前。まだキノコ採りを始めたばかりの時にカラマツ林を彷徨っていたら、偶然目の前に現れた。何も知らないズブの素人だった私は「マイタケだ!」と大喜びして、キノコを鑑定してくれる土産物屋のおばちゃんに見せに行くと、「これはハナビラタケ。でも、いいキノコだよ」と。それ以来、このキノコには出会っていなかったので、今回は富士山に「狙い」に行った。時期的に若めの菌が多く、「花びら」部分がまだ開ききらずにキレイだ。以前は気づかなかったが、根本はけっこう太い茎状になっていて、採取してみるとちょうどブロッコリーのような見映えだった。大きいものでは、40~50cmの塊になるという。
    天ぷらや炒め物にすると、コリコリとした歯ごたえでとても美味しい。深山のカラマツの根際にポツンと生えているハナビラタケを食す時、山全体のパワーを身体に取り込めるような気分になるが、研究室?で栽培されたハナビラタケは、いかほどのパワーを秘めているのだろうか。


    2010/7/27 (富士山)


    2010/7/27 (富士山)


    塊状の根から枝分かれ(葉分かれ?)する姿はブロッコリーやカリフラワーのようだ

    梅雨明け後の富士山

    梅雨明け後の富士山5合目を覗いてきた。本格的なキノコのシーズンを狙うならば、この標高を散策するのは8月の上旬からという感じではあるが、梅雨明け直後~夏キノコのスタート時という端境期に森はどんな様子なのだろうかという興味と、猛暑の都会にいるよりも原生林の中の方がきっと爽やかだろうという避暑欲望から、初めてこの時期に足を運んでみた次第である。下界ではカラカラ天気が続いているが、富士山周辺では昨日も雨が降っていたようで、森の中はいい感じの湿り具合だった。5合目あたりの森の中は「夏キノコが発生しはじめる時期」のようで、様々なキノコの幼菌たちが可愛らしい姿を見せていた。
    もっとも元気だったのはウスタケ。本格シーズンに入れば、邪魔者扱いさえされかねないキノコだが、幼菌時は色合いも形も美しく、なかなかフォトジェニックだ。茹でこぼせば食べられる。夏のメジャー食菌であるアンズタケは、ホントに出始めたばかりのようだった。大きくなれば、縁が波打ったようなじょうご型になるものが多いが、今の時点ではキレイに「キノコ型」を保っている。オムレツにすると、そのフルーティーな味と半熟卵の相性が素晴らしい。そして、これも「富士山らしい」キノコである、ドクヤマドリ。里山では見られない毒菌イグチだ。大きくなると、そのふてぶてしいまでの風貌に圧倒される。幼菌は一見可愛らしい姿であるが、すでに悪党ならではのオーラを発しているように感じるのは私だけだろうか。
    富士山の原生林の中で聞こえてくる音は、鳥の鳴き声と虫の羽音、そして自衛隊演習の機銃・砲撃の音だ。人の手が加えられていない原生林と、戦争のための訓練。富士山では、どちらも広く一般の人の眼に触れることのない「異様」な世界が、隣り合わせている。


    2010/7/22 (富士山)


    2010/7/22 (富士山)


    2010/7/22 (富士山)

    梅雨明け後の端境期

    東京は梅雨が明けて連日猛暑となっているが、キノコ師にとってはこの時期が最も行動に困る季節ではないだろうか。二、三日前までは山の中を賑わせていたキノコたちも一気に姿を消してしまう。あとは、夕立や台風など、恵みの雨を待つしかない。富士山あたりに行けば、まだ森の中に湿気は残っているかもしれない。今週は、今シーズンもお世話になる富士山に挨拶がてら、須走5合目付近の原生林を歩いてこようか。
    写真は、昨日、キヌガサタケのマントの中から梅雨明け後の竹林上空を眺めたもの。この手の「イメージ写真」はなるべく載せないようにと考えているのだが、皆さまへの暑中見舞い代わりに。


    2010/7/19 (東京郊外)

    いまだにヒダと別れられないイグチ

    キヒダタケ。これもイグチの仲間である。前の記事で、イグチとは傘の裏がヒダではなく管孔になっているキノコ、と書いておきながらだ。日本では、これが唯一の例外らしい。腑に落ちないかも知れないが、顕微鏡レベルの観察をすると、やはりイグチの仲間なのだそうだ。確かに、ヒダ以外の雰囲気にはイグチっぽさがある(無理矢理な思い込みだろうか?)。
    ヒダは濃い黄色で、ヒダの間を連絡脈という細かい横方向の小ヒダが縫っている。この脈が発達して現在のイグチの管孔となったという話を聞いたことがあるが、真偽のほどは定かではない。以前は食菌扱いであったが、現在は「体質によっては中毒する」という要注意菌。ヒダを傷つけると青変するものもあるようだ。


    2010/7/8 (東京郊外)


    ヒダを脈が連絡している様子

    愛すべきイグチ

    関東地方も梅雨が明けて、本格的な夏に入ったようだ。先に取りあげたベニタケ系の菌とともに、さまざまな色形で森を賑わせる夏のキノコにイグチ科の仲間がある。漢字で書けば「猪口」。その語源は不詳らしい。大まかに言えば、傘の裏が「ヒダ」ではなく「管孔」と呼ばれるスポンジ様の状態になっているキノコたちだ。代表的なイグチには、これまでも取り上げたヤマドリタケ(ポルチーニ)や秋のカラマツ林での代表的なキノコであるハナイグチなどがあるが、他にも数知れぬイグチがこの季節を謳歌する。そのバリエーションは多岐に渡り、また同定も難しいものが多く、ベニタケ科、テングタケ科とともに夏の三大同定困難菌群とでも言えようか。ここでは、今月に入ってから東京郊外で見られた、それほどメジャーではないイグチをいくつかご紹介しよう。
    上段左はミドリニガイグチ。オリーブ色でフェルト状の傘に黄色~紅色の柄。食毒不明。上段右はハナガサイグチ。森の中でこの蛍光オレンジ色を見つけると、その違和感に驚かされる。これも食毒不明。中段左はオニイグチ、もしくはオニイグチモドキ。その違いは顕微鏡レベルのチェックをしないとわからないらしい。また正確に言うと、この菌はイグチの中でもオニイグチ科というグループに分類される。まだ食べたことはないが、意外と美味いらしい。この写真の中では最もメジャーなキノコか。中段右はキアミアシイグチ。黄色くてハッキリとした網目のある柄が特徴。この個体の傘は濃いオリーブ色だが、薄黄色のものまでと変異が大きい。苦くて食べるには向かないそうだ。下段左はコビチャニガイグチ。傘も柄も褐色がかった濃いオリーブ色。管孔を傷つけると褐色に変色する。下段中はホオベニシロアシイグチ。全体に白っぽく、柄には粗い網目がある大型菌だ。このキノコの管孔も傷つけると褐変する。食べる人もいるようで、酸味があるらしい。下段右はクリイロイグチ。栗褐色といわれる傘の色と管孔の白色のコントラストが美しい。傘の表面はビロード状。美味くはないが食えるそうだ。傘がフェルト状でその色が薄めのクリイロイグチモドキという種類もあるので、ややこしい。
    イグチの仲間には、傷を付けると青や赤、褐色などに変色する種類が数多くあり、それが同定の決め手になることがある。それでも、私などにはまったく見当のつかないイグチがたくさんあり、ヤブ蚊の巣窟となっているこの時期の森から帰ってきてはキノコ図鑑とにらめっこをする毎日だ。(この記事中にも同定間違いがあるかも知れない)

    ※「イグチ=猪口」というのはキノコの古語で、猪の口先に形が似ていることから名付けられたらしい。イグチ科特有の語源ではなく、キノコ自体の語源ということのようだ。「猪口」と書いて「ちょこ」とも読むが、そう言われると、酒を飲むお猪口とキノコの形は似ていることに気づく。「ちょこ」を漢字で表す「猪口」は当て字なのでイノシシとは関係がないとする説もあるが。


    数々の愛すべきイグチたち (すべて東京郊外)


    傷つけて褐色に変化したホオベニシロアシイグチの管孔

    華麗でクサい女王様

    これが「キノコの女王」と呼ばれるキヌガサタケだ。梅雨明け直後の竹林で初めて出会えた。早朝、ぶよぶよした卵(幼菌)から首を覗かせた状態のままなかなか成長しなかったが、陽が当たりはじめるとニョキニョキと首を伸ばし、レース状のスカートを開いていった。トータルで1時間半強。とても速い成長速度だ。
    観察したのは竹林の下にある崖状の場所で、水平状態に伸びていくものが多かった。7本ほどのキヌガサタケが姿を見せていたが、中には成長した自分の重みで、すっぽりとツボ(卵の殻)から抜けて地面に落ちてしまうものも。頭の部分の緑黒色の粘液はグレバといい、非常にクサい。ひどく汚れたドブ川のような臭いといえばいいだろうか。この臭いにつられてハエなどの虫が集まり、その虫たちに胞子を運んでもらうという仕組みだ。出はじめの時には鼻を近づけてもあまり臭わなかったのだが、成長が進んでいくうち、辺り一面に悪臭が漂いはじめた。グレバの部分を外して数本採取したキヌガサタケでさえも、帰り道、クルマの中に異臭を充満させ、窓を開けないではいられない状態になった。
    海燕の巣、フカヒレとともに、中華料理のスープの三大高級食材とされる。グレバ部分を外し、湯がいてから何度も水にさらして中華スープにしてみたが、なるほど不思議な食感だ。柄は粗いスポンジ様の見映えだが、湯がいた後でも奥にシャキッと感がちゃんと残っている。周囲はかすかにヌルッと感。スカートの部分も同様だが、肉が薄い分、シャキッと感はわずかに感じるのみ。レースの網目がスープをふんだんにまとい、ジュルッという感じだ。丁寧に水にさらしたからか、臭い、味ともにまったくクセはない。湯がいてから、わさび醤油で食うのも美味いらしい。
    このレースのスカートがない状態のスッポンタケというキノコがある。そのネーミングといい、その形といい、すぐさま男性の象徴を思い浮かばせるキノコだが、女王たるキヌガサタケも、崖から水平に伸びてくる姿を捉えたら非常にエロティックな連続写真になってしまった。


    2010/7/17 (東京郊外)


    この個体では7:20から9:00までの1時間40分ほどで開ききった


    女王様がまもなく中から姿を現しそうな卵状の幼菌

    こっちは黄色いタマゴ

    タマゴタケついでに、キタマゴタケを。黄色いタマゴタケである。レギュラータイプの赤色が黄色に変わったと思えばいい。以前は、単に色が違う亜種とされていたようだが、DNA解析によって独立した別種であることがわかったらしい。
    イボの消えたベニテングタケタマゴタケに似ると書いたが、キタマゴタケの場合に気をつける相手はタマゴタケモドキという毒菌だ。タマゴタケモドキは傘の周囲に条線がないこと、ヒダとツバが白い(キタマゴタケの場合は黄色い)ことで区別がつく。ベニテングタケを誤食した場合は、酔ったようになるか、ひどくても吐くくらいで済むが、タマゴタケモドキの場合は死に至る危険性があるので、黄色は「注意」ではなく「NG」としておいた方がいいかも知れない。


    2010/7/9 (東京郊外)


    キタマゴタケのヒダとツバは黄色い
    Eat-a Fungi.
    東京在住。キノコ中級者。いちばん好きなキノコはチャナメツムタケ。自由業。

    Eat-a Fungi

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    *このブログ中でのキノコの同定には間違いがある可能性もあります。天然キノコを食される場合にはご自身の責任においてご判断ください。 *福島第一原子力発電所事故の影響により富士山をはじめとする各地で天然キノコの採取に対する自粛の要請が自治体から出されています。このサイトは皆さまに各地での天然キノコ採取を薦める主旨のものではありません。くれぐれも、各自、自己責任でのご判断を願います。